旧ソ連の冷蔵庫

1

旧ソ連では冷蔵庫工場の生産性を測る基準として、生産した冷蔵庫の総重量(トン数)が使われていた。そのため、ロシア人は大量の鉄を使い、非常に重たい冷蔵庫を作った。

2

ある冷蔵庫工場に優れた技術者がいた。彼は人民のために軽くて使いやすい冷蔵庫を設計した。
数ヵ月後、党から工場に対して叱責が下された。他の工場よりも生産性が低かったからだ。党からの手紙には「人民に対する反逆」という文言が含まれていた。
数週間後、優秀な技術者はアメリカへ亡命した。

3

ある冷蔵庫工場に優れた技術者がいた。彼は冷蔵庫の改良を命じられた。技術者は無駄な部品を排除し、スペースを広げ、なおかつ冷却効率を向上させた。
数ヵ月後、工場は人民に対する反逆のかどで叱責された。
技術者はアメリカへ亡命した。

4

ある研究所が画期的な冷却技術を開発した。その技術を採用すれば、冷却装置の重量・スペースは 60% 程度に節約される上、冷却効率は 80% 程度向上すると見込まれていた。
誰もその技術で冷蔵庫を作らなかった。
研究所の職員は半分以上アメリカへ亡命した。

5

総トン数ではなく、台数や機能数で冷蔵庫を評価してほしいと申し出た工場もあった。しかし党の職員たちはこう言った。「台数を数えるのは大変だから」「私は数えられるが、数えられない職員もいるから」「生産計画は総トン数に基づいて三年先まで立てられている。すぐには変えられない」
幸い、生産計画が更新される前に旧ソ連は消滅した。

まとめ

ステップ数で生産性を測ろうとするなんて、あなたは頭がおかしいんじゃないのか。